日本円だけでなく外貨を視野に入れた資産運用のススメ
前回は、堅実投資ということで日本円建ての定期預金について紹介させていただきましたが、逆に日本円のみを持っていて外貨建て投資や海外を対象とした投資をしていないという方もいらっしゃるのではないかと思います。確かに、日本円で銀行預金を保有することは、日本国内での生活資金を保管するうえで安全性があります。しかし、近年の物価高騰やスタグフレーション(景気停滞と物価上昇の同時進行)を考えると、外貨建て投資や海外資産を視野に入れることが資産保全の一助となるかもしれません。
本記事では、スタグフレーションの概要や日本円資産のみを保有するデメリット、さらに外貨建ての資産運用をはじめる際のポイントについて詳しく解説します。
スタグフレーションとは、経済成長が停滞しているにもかかわらず、物価が上昇する状況を指します。通常、景気が停滞している場合、物価も下落する傾向にありますが、この現象はその逆です。
現在の日本では、賃金の伸びが鈍い一方で、食品や生活必需品の価格は上昇を続けています。このような状況下で、物価高騰に対する資産運用の対策が重要になっています。
日本円現金資産のみを保有するデメリット
インフレによる資産価値の減少
日本円現金資産を保有している場合、物価上昇によりその価値が目減りするリスクがあります。スーパーでの買い物や公共料金の値上げを実感する方も多いのではないでしょうか。現金の額面は変わらないものの、購入できる商品の量が減る「実質的な価値の減少」を意識する必要があります。
海外輸入品の価格上昇
日本は多くの製品を海外から輸入しています。円安が進むと、輸入品の価格が上昇し、生活コストがさらに増大する可能性があります。日本円資産のみでは、このような為替リスクに対応しづらいのが現状です。
外貨資産を持つことのメリットとインフレ対策
インフレやスタグフレーションに対応するための方法として、以下の選択肢があります。
外貨を持つ
まずは外貨そのものを保有することです。外貨建ての銀行口座を開設することで、円安時に資産価値を維持する手段となります。
外貨建ての貯蓄型保険に加入する
外貨建ての保険は為替リスクがあるものの、利回りが日本円建ての商品よりも高い場合があります。元本保証型の商品を選ぶことで、一定の安心感を得られるでしょう。
株式やファンドに投資する
世界的に成長を続けている企業や分散投資型のファンドを選ぶことで、インフレの影響を抑える可能性があります。ただし、投資リスクが高まるため、初心者は少額から始めることをおすすめします。
価値のあるものに変える
金や不動産など、物理的な資産を保有することも選択肢の一つです。これらはインフレに強い資産とされています。
リスクを理解したうえでの資産運用
外貨や投資に興味を持った方が気を付けるべきリスクには以下のようなものがあります。
為替リスク
為替の変動により、資産の価値が上下するリスクです。それぞれの通貨ベースで考えると為替リスクは無視できますが、対日本円で考えると日々変化する通貨の上下が目に見えるようになります。まずは銀行の外貨口座を開設し、少額の外貨を保有してみて、このリスクに耐えることができるか検証してみると良いでしょう。
運用リスク
株式やファンドなどの投資商品には、元本割れの可能性があります。特に初心者は、リスクの高い商品を避け、まずは元本保証型の商品から始めるのが良いでしょう。
「元本保証」という言葉には安心感がありますが、その裏側にはしっかりと確認すべき重要なポイントが隠れています。以下の点を事前にチェックすることで、リスクを未然に防ぎましょう。
- 保証を提供する主体の確認
元本を保証しているのはどの金融機関や保険会社なのかを明確にしましょう。その機関が信頼できるかどうかは、資産を預けるうえで最も基本的な要素です。 - 第三者機関の格付け
保証を提供する機関の信用度を示す格付けが、第三者機関によって評価されているかを確認してください。高い格付けを持つ機関であれば、倒産リスクが低く、より安心して利用できます。 - 契約書の詳細な内容の確認
契約書に「元本保証」の条件が明記されているかを注意深く確認しましょう。特に、保証が適用される期間や例外事項についても把握しておくことが大切です。 - リスクの明確化
「元本保証」といっても、提供元の破綻や市場の大幅な変動による影響が完全に排除されるわけではありません。保証の範囲や対象をしっかり理解することが重要です。
倒産リスク
金融機関や保険会社が倒産すると、元本保証の商品でも資産が失われる可能性があります。契約前に保証機関や格付けを確認しましょう。中には計画倒産スキームを用いた詐欺も存在します。重要なポイントは契約書確認、第三者機関の格付け、発行国の金融当局に登録されているかの確認等です。
早期解約リスク
貯蓄型保険や定期預金を早期解約すると、手数料が発生し元本割れの可能性があります。資金を運用する期間を明確に計画することが重要です。特に満期までの期間が長い商品に加入する場合は注意が必要です。早期解約すると保険会社や保険代理店しか儲かりません。
詐欺リスク
高利回りを謳う投資案件の中には詐欺が含まれる場合があります。耳障りの良い話に注意し、必ずリスク開示が行われている信頼できる商品を選びましょう。
- 契約書を隅々まで読む
たとえ契約書が外国語で数百ページに及ぶ場合でも、必ず全てを読み込むことが大切です。内容を十分に理解できない場合は、信頼できる専門家や翻訳者に確認を依頼しましょう。契約書は、自分自身を守る唯一の手段です。その内容に目を通さずに進めることは非常に危険です。 - 第三者機関の格付けを確認
金融商品が第三者機関による格付けを受けているか確認することも重要です。格付けは、一定の厳しい条件をクリアした金融商品にのみ与えられるものです。説明時に「格付けされている」と言われても鵜呑みにしてはいけません。その商品が本当に格付けリストに含まれているかを、直接格付け会社の公式情報で確認しましょう。 - 発行国の金融当局に登録されているかを確認
購入を検討している金融商品が発行国の金融当局に登録されているかどうかを必ずチェックしましょう。未登録の商品は、詐欺のリスクが大幅に高まります。登録の有無は金融当局の公式サイトや資料で確認できます。 - 振込先の透明性を確認
振込先が送金代行会社など、投資先とは異なる名義の場合には要注意です。その資金が適切に管理されていない可能性があり、送金された後に別の口座へ流れてしまうケースもあります。お金の流れが透明であり、信頼できる振込先であることを確認してください。
少額からのスタート
外貨資産を始める場合、いきなり多額の資産を動かすのはおすすめできません。まずは少額で試し、その変動を観察してみましょう。そして、経験を積んだうえで、次のステップにチャレンジするとよいでしょう。初心者は運用リスク、倒産リスク、詐欺リスクの少ない保険会社や銀行、政府発行の商品が良いのではないかと思います。
いかがでしたでしょうか?日本円資産は、ペイオフ制度により一定額が保護されるため、安全性の高い選択肢といえます。一方で、資産を多様化することでインフレや為替変動に対応する力を持つことができます。資産運用を始める際には、リスクを十分に理解し、少しずつステップアップすることが大切です。多様な資産運用を通じて、自分に合った最適なバランスを見つけてみてください。